保険給付とは
健康保険の給付は、健康保険法(第1条)に定められているとおり、「業務外」の疾病、負傷等に対して行われます。そのため、「業務中」の負傷や通勤途中でのケガに対する給付は対象外となります。
また、健康保険の「保険給付」には、医療機関等で受けた医療行為や薬の処方など、「物」として提供(給付)される「現物給付」と、傷病手当金、高額療養費、出産に係る一時金など主として(生活)費用の保障を目的として給付金が支給される「現金給付」があります。
業務外の病気やけがに対して給付が受けられます
業務外の原因で病気やけがをしたときに、健康保険を扱う病院や診療所(保険医療機関)では、次のような療養を受けることができます。
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 処置、手術その他の治療
- 在宅療養・看護
- 入院・看護
●勤務中や通勤途中のけがは労災保険の扱いに
健康保険では、加入者(被保険者又は被扶養者)の業務外(労働者災害補償保険の適用となる業務災害以外)の疾病、負傷、死亡、出産に対して給付が行われます。
そのため、業務中(業務や業務中の事案に起因する)の負傷、疾病や通勤途中での負傷などについては、健康保険は適用されません。
また、加入者が法人の役員である場合などで、その法人の役員(※)としての業務に起因する疾病や負傷、死亡に対しては、給付は行われません。
- (※)被保険者の数が5人未満である適用事業所に使用される法人の役員であって、一般の従業員が従事する業務と同一である業務を遂行している場合には、その業務に起因する疾病、負傷若しくは死亡に対し、健康保険から保険給付が行われます。
健康保険が使えない場合があります
健康保険の給付の対象となるのは、あらかじめ国によって治療方法として安全性や有効性が認められ、保険の適用が認められている療養に限られます。
健康保険が使えないとき | 健康保険が使えるとき |
---|---|
仕事や日常生活にさしさわりのないソバカス、アザ、ニキビ、ホクロ、わきが等 | 治療を必要とする症状があるもの |
回復の見込みがない近視、遠視、乱視、斜視等 | 視力に変調があって保険医にみてもらったときの診察、検査、眼鏡の処方せん |
美容のための整形手術 | けがの処置のための整形手術 |
健康診断、生活習慣病検査、人間ドック | 診察の結果、治療が必要と認められた場合の治療 |
予防注射、予防内服 | 傷口から感染している可能性がある場合の破傷風の予防注射 |
正常な妊娠・出産 | 妊娠高血圧症候群、異常出産等、治療する必要があるもの 不妊症の治療(年齢、治療内容等による制限あり) |
経済的理由による人工妊娠中絶 | 経済的理由による場合以外の母体保護法に基づく人工妊娠中絶 |
- ※上記の他、入院時の「差額ベッド代」や保険適用外の方法や材料による歯科治療(自費治療)は自己負担となります。
「保険外併用療養費」については差額負担の医療を受けるとき参照。
保険給付が制限されるとき
業務外の病気やけがであっても、次のような場合には保険給付が制限されます。
全部を制限(埋葬料以外) |
|
---|---|
全部または一部を制限 |
|
一部を制限 |
|
- ※少年院や刑事施設・留置場等に入っている場合も、公費で療養の給付が受けられること等から保険給付が行われません。
医療費負担と支払いの流れ
けがや病気の治療を受けた場合、加入者は医療機関の窓口で自己負担を支払いますが、医療費のうち、残りの保険給付相当額については、健保組合が支払います。請求について医療機関は健保組合が負担する治療費を1ヵ月分ごとにまとめて請求しますが、全国すべての医療機関と健康保険組合が個々に請求や支払いを行うと大変繁雑な作業となるため、請求・支払いは審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金等)を通して行われています。
このため、健康保険組合に医療費が請求されるのは診療月から約2ヵ月後となり、その後、各健保組合で高額医療費等の計算が行われます。そのため、対象者にこれらの給付金が支給されるのは受診後約3ヵ月後以降になります。

保険給付の時効について
健康保険から各種給付を受ける権利は、「起算日」(受けることができるようになった日)の翌日から、2年間となります。(時効)
各種給付金の「起算日」については原則下記のとおりとなりますので、ご留意いただき、お早めの申請をお願い致します。
給付金の名称 | 時効の起算日 |
---|---|
療養費 | 療養に要した費用を支払った日の翌日 |
高額療養費 | 診療月の翌月1日 ただし、診療費の自己負担分を診療月の翌月以降に支払ったときは、支払った日の翌日 |
傷病手当金 | 労務不能であった日ごとにその翌日 |
出産手当金 | 出産のため労務に服さなかった日ごとにその翌日 |
出産育児一時金 | 出産日の翌日 |
埋葬料(費) | 埋葬料については死亡した日の翌日。埋葬費については、埋葬を行った日の翌日 |
移送費 | 移送に要した費用を支払った日の翌日 |